2021年08月
明るい農村 あかちょうちん鉄道 その13 夢の彼方へ
明るい農村 あかちょうちん鉄道 その12 酒は涙かため息か
真昼の秘書室
「逆転人生」「クローズアップ現代+」「仕事の流儀」「情熱大陸」などの
番組を制作する放送局はもとより、
世界中のメディアから取材の申し込みが絶え間なく舞い込んできた。
・・・誠に申し訳ございません。
わが社のPRにもなり、誠に喜ばしいかぎりではございますが、
当分の間は見合わせていただいたほうが・・・。
え? いや、あの・・その・・、
取材を拒否するとか、そういうことではございませんが・・
社長は・・ここのところ毎日、なんといっていいのやら、
つまり、こちらにはこちらの深い事情がございまして・・・。
受話器を置くたびに、秘書は大きなため息をついた。
室内にため息が充満して、酸欠になった秘書は窒息死寸前となって、
救急車で搬送され、危うく一命をとりとめた。
あかちょうちん社長室から、
今日もドア越しに鼻歌が漏れてくる。
ちょいといっぱいのつもりで飲んで、
いつのまにやら線路酒
気がつきゃ 駅のホームのベンチでごろ寝
わかっちゃいるけど やめられない
あ それ すいすい す~だらだった すらすら すいすいすい~
明るい農村 あかちょうちん鉄道 その11 産声
あかちょうちん鉄道グループ
♪ この樹 なんの樹 気になる樹 ♪
テレビコマーシャルの画面に、次々と関連会社がスクロールされた。
ふるさと開発株式会社 耕作放棄地の圃場整備 空き家のリホーム
ふるさと食品株式会社 駅弁 食品加工製造販売
ふるさと農場株式会社 米穀・野菜・果樹栽培 畜産・養鶏等
ふるさと観光株式会社 観光・ホテル・ブライダル
ふるさと酒造株式会社 造り酒屋の経営再建
ジャパネットふるさと株式会社 特産品のテレビCM販売
グループ会社の設立は、若い人たちの雇用の大きな受け皿となった。
リホームした空き家を社宅にしたこともあって、
限界集落寸前だった村々に、
セミしぐれのような赤ん坊の産声が響き渡り、
産婦人科は医療崩壊寸前となった。
統廃合寸前だった幼稚園・小中学校は、
校舎を増築しないことには、
園児・児童・生徒の受け入れができなくなった。
あかちょうちん鉄道は、地上50階建の本社高層ビルを新築した。
明るい農村 あかちょうちん鉄道 その10 ぽっぽや
季節の移り変わりとともに、メニューに工夫を凝らした。
♪ 季節が都会ではわからないだろと・・・
あのふるさとへ 帰ろかな 帰ろかな・・♪
あふれる望郷の涙は、ちょうどいい塩加減だった。
ふるさと駅弁は、全国駅弁フェスティバルで
特別金賞を獲得したおかげで、爆発的なヒット商品となった。
担当役員が血相を変えて飛んできた。
・・・しゃっ しゃっ しゃちょう・・、
どえりゃ~ことになっとるでよう~
え、え、駅弁が・・・・・
そういうか言わんうちに、鼻血を出して気絶した。
駅弁を買い求める客の行列が10キロ以上続いたのだった。
あかちょうちん鉄道は、数々の映画・ドラマの舞台となった。
ふだんはひっそりとした無人駅
「ぽっぽや 望郷編」は、カンヌ国際映画祭で最高の栄誉に輝いた。
担当役員が血相を変えて飛んできた。
・・・しゃっ しゃっ しゃちょう・・、
どがんすりゃええんでがんす~ 駅が・・駅が・・
そういうか言わんうちに、鼻血を出して気絶した。
映画の舞台となった駅に、世界中の観光客が殺到したのだ。
その混雑ぶりは、地元の警察だけでは交通整理ができないほどだった。