20✕✕年 近未来
・・遥か地平線の彼方まで続く南太平洋・・
海原から突き出して林立するヤシの木々が、風に吹かれて揺れている。
この海域にあった国々は、今は海底に水没している。
【その1】
負の遺産を受け継いだ人類は絶滅の危機を迎えようとしていた。
地球温暖化による未曾有の風水害・干ばつ等の異常気象は、
地球的規模で農作物に壊滅的な被害をもたらした。
地球的規模で農作物に壊滅的な被害をもたらした。
世界の主要な穀倉地帯の全域は大洪水に見舞われ、雨一滴も降らないひび
割れた不毛の大地では、小麦・大豆・トウモロコシの1粒さえも収穫できない
有様だった。
食料自給率5%を割り込んでいた日本は、諸外国からの食糧輸入が途絶え、
国家の存亡にかかわる危機的状況となった。
国家の存亡にかかわる危機的状況となった。
食糧パニックは全土に波及し、人々は食料の買い出しに殺到するも、
備蓄は既に底を尽き、食品価格、たとえば、卵1パック4,980円 米10キロ89,980円に急騰、
最早、貨幣価値は紙くず同然となった。
備蓄は既に底を尽き、食品価格、たとえば、卵1パック4,980円 米10キロ89,980円に急騰、
最早、貨幣価値は紙くず同然となった。
【その2】
コンビニ・マーケットは暴徒化した群衆による略奪の標的となった。
人々は飢えに苦しみ、巨大ハリケーンにも劣らない暴動の嵐が吹き荒れた。
廃墟の街に散乱して死臭漂う餓死者の屍にハエが群がる様相は、
古く江戸時代:寛永・享保・天明・天保の大飢饉の地獄絵図を彷彿とさせた。
【その3】
さらに時を重ね、生き残った者は、蔓延する疫病に悶え、バイオハザ
ードのような、人の心を失くしたゾンビとなって巷を徘徊した。
【その4】
村の集会所は悲痛な空気が漂っていた。
村人のひとりが泣きくずれた。
・・ヤツらは血も涙もない鬼畜生じゃ。わしの娘も喰われた・・
・・わしらも餓鬼になって泥を食らうしかやりようがつかねえ・・
村の衆は泣きの涙で溺れそうなほどだった。
・・もうじき稲刈りの時期じゃ。またヤツらが襲ってくるぞ・・
村の衆は泣きの涙で溺れそうなほどだった。
・・もうじき稲刈りの時期じゃ。またヤツらが襲ってくるぞ・・
それまで、半目を閉じ、黙りこくったままの長老、重い口を開き、ぼそりと言った.。
・・・おサムライを雇うだ・・・
【その5】
やがて、この村に七人のサムライが雇われてきた。
彼らは、屈強な戦闘プロフェッショナルだった。
ほどなく、村の周囲には塹壕が掘られ、幾重にも鉄条網が張り巡らされ、
要所要所に設置された監視塔には重機関銃が据え付けられた。
要所要所に設置された監視塔には重機関銃が据え付けられた。
村人には、自動小銃・手りゅう弾・RPGロケット砲(ゲリラが肩に担いでる兵器)等
の武器が支給され、連日に亘って実戦さながらの戦闘訓練が繰り返された。
【その6】
季節は秋となり、コメの収穫が終わった。
やがて、この時期を狙って、ゾンビの大群が再び村を襲い、略奪の限りを
尽くすことだろう。
【その7】
・・・・いよいよ、その時が来た・・・・
【その7】
・・・・いよいよ、その時が来た・・・・
・・監視塔から緊急警報・・・・
・・こちら、チェックメイト・キングツー・・
・・こちら、チェックメイト・キングツー・・
・・・前方に敵の大群発見、直ちに戦闘配置につけ ・・・
ほどなく、塹壕に身を伏せ、固唾を飲んで見つめる鉄条網の彼方から、
恐ろしい形相をした凶暴なゾンビの大群が、怒濤のような勢いで
目前に迫ってきた。
目前に迫ってきた。
【その8】
監視塔の重機関銃が火を噴き、一斉に攻撃が開始されると
村は瞬く間に修羅場の戦場となった。
銃弾が激しく飛び交い、砲弾が炸裂するごとに
ゾンビの肉塊が宙に舞いあがった。
ゾンビの肉塊が宙に舞いあがった。
村の長老はバズーカ砲の引き金を引いた途端
ぎっくり腰になった。
ぎっくり腰になった。
敵は予期せぬ反撃に地団太を踏むと同時に、地雷を踏んだ。
斯くして、激しい戦闘の末、ゾンビの大群はことごとく撃滅された。
【その8】
村人は七人のサムライに、この年の新米をふるまい、三日三晩、戦勝を祝った。
浮かれ気分の村人を尻目に、
サンダースと名乗るサムライの心は暗かった。
サンダースと名乗るサムライの心は暗かった。
・・戦いに勝ちはしたが、やけに後味が悪いぜ。
ヤツらには、なんの罪もなかった。
罪深いのは、こんな世の中にしたご先祖様だからな・・・